「海の日」特集・特別インタビュー(8/9)

 海の日は、海事関係者の悲願として平成7年(1995)に制定され、平成8年(1996)から施行された国民の祝日の一つです。


 平成15年の祝日法改正(ハッピーマンデー制度)により、7月の第3月曜日となりました。
 「海の日」は、海の恩恵に感謝すると共に海洋国家日本の繁栄を願う日です。世界の国々で「海の日」を国民の祝日とするのはわが国が唯一であり、それだけ海との関係を重要視する表れの一つでもあります。  
 日本海事新聞よりこの日の紙面を飾る取材を受けましたので編集・掲載します。
 
 

「海の日」特集・特別インタビュー(7月21日掲載)

○今こそ多目的支援船の建造必要、国内だけでなく国際貢献にも

              病院船建造推進議連 衛藤征士郎会長

 

 

 東日本大震災後の被災地支援活動では、あちこちで寸断された陸路に代わって、ヘリコプターによる空路とともに海路からの支援物資の搬送が大きな威力を発揮した。国政ではこれと時期を同じくした4月半ば、超党派の国会議員による「病院船建造推進議員連盟」が発足、5月19日には建造推進に関する要請書を枝野幸男・官房長官に提出した。同議連の衛藤征士郎会長に、建造推進を考えるに至った経緯や現段階での病院船の構想、運用イメージなどについて率直な所を話してもらった。(聞き手 日本海事新聞社専務取締役・遠藤修身)

 

 前回の轍 踏まない

 

 ■いわゆる病院船を建造すべきだと考えるようになった経緯から、まず話して欲しい。

 「1995年の阪神・淡路大震災の直後に、病院船が必要だとして自民党のなかに病院船建造推進委員会(プロジェクトチーム)を作ったことがある。私が座長を務め、何度も勉強会をやったが、最後は国家財政の問題で頓挫した。今回の大震災を受けて『なぜ、あの時に造らなかったのか』と、大きな悔いが残った」

 「前回の徹を踏まないために、今度は超党派で病院船建造推進に向けた議員連盟を立ち上げ、もし政府が予算がないと積極的でない場合は、われわれが特別措置法をつくり政府に建造させるという不退転の覚悟と決意で取り組んでいる」

 「議連は立ち上がったが、まずやるべきことは今年度の補正予算で調査費を付けること。当面は次の三次補正で調査費をと考えており、枝野官房長官らに直接お会いして要請、調査費を付けるとの言質を取った。次は来年度予算で基本設計と詳細設計を含めた設計費を付け、再来年以降の3年間で世界一の病院船を建造する、というロードマップを持っている」

 「また病院船は防衛省や厚生労働省、総務省、外務省、国土交通省など複数の省が関係するので、予算については内閣府を窓口にしたい。今後調査費が付いたら、基本概念(キーコンセプト)を病院船建造推進委員会で詰めていく」

 

 重要な国家戦略に

 

 ■議連が構想する病院船の規模やベッド数、運用方法など、大まかなイメージを聞きたい。

 「議連では『災害時多目的支援・病院船』という素案を持っている。ここには?国際軸(国際貢献)?国家軸(国内災害対応)?地方軸(国境の島や離島・僻地の医療支援)という3つの大きな柱がある。先の大震災では、150を越す世界の国々から支援をいただいた。恩返しの意味でも災害時に役に立つ世界一の『多目的支援・病院船』を日本として所有することは、国家戦略的にも極めて重要だと考える」

 「一方で、国内では高い確率で東海地震、東南海地震などの大地震が起こるといわれている。だから今回の病院船には、国内外の期待に十分こたえられる装備と規模が必要だ。例えば、沖に停泊して被災地で捜索や救助にあたるヘリコプターは2機、川を遡ったりと少々の陸地なら進めるホバークラフトも2隻は欲しい」

 「また、ベッド数は最低500床。海外支援派遣も考えると、外航船が望ましい。われわれが想定するコンセプトは『海に浮かぶ大学病院』であり、当然多くの診療科を用意しなくてはならない。さらに、災害時の救命は72時間以内が勝負といわれるだけに、船足も早くなければ」

 「加えて、ドック入りなどを考慮すると最低でも2隻は必要。母港は瀬戸内海、日本海、太平洋のいずれにも展開できる場所に決め、それ以外に同船を支援するストックヤードを瀬戸内海、日本海、太平洋側の港に確保する。これらの支援港には、国の責任において医薬品・食糧・衣類などを備蓄。医者は防衛医科大や自治医大などから、看護師やボランティアなども常に確保しておかなければならないだろう」

 

 離島などの支援も

 

 ■病院船を建造した場合、災害などがない平時の運用については、どう考えているか。

 「建造費も維持費もかさむ病院船は、有事の際のしっかりとした運用方法を考えると同時に、平時の有効利用策を十分検討しておく必要がある。議連では、医療設備が整っていない離島や海から向かうほうが便利な過疎地の医療支援などを、平時の活用法として考えている。いずれにしても、調査費が付いた段階で一歩進めた活用方法を検討していきたい」

 「今回構想している災害時における『多目的支援・病院船』は、内航と外航の両方が求められる上、海外支援派遣なども考えると、船の運航は海上保安庁より防衛省が適任だ。そしてこの船は、日本が保有する『世界人道貢献船』の第1号だ」

 「先の震災では空路や道路は寸断されたが、海路は生きていた。地震では、瓦礫の下で2日も3日も救助を待つケースがある。その意味でも、こうした病院船の登場を待ち望む声は大きい。新造船ができるまでの間は、中古船を改装して就役させるなども想定される。今後も、しっかりした病院船を造るべく努力を続けたい」